ふるなつの風
からふ





溜まっていた切手を
壁に一枚ずつ貼っていく
染み付いた匂いと
色の抜けてしまった壁と
すべり落ちていく手のひら



薄く伸びていくドアの隙間の光を
セロハンテープで繋げていく
途切れないように
平行に通っていくよのなか
布団はまだ乾いていない



郵便箱が壊れている
直そうとしたけど
ネジの締め方を忘れていて
少しだけほっとした
赤面症の扇風機が
なまぬるい風を運んできている



そうして不器用な午後は過ぎていく
少しだけけだるくて
ちょっと濡れている布団に横たわる
網戸を開けると
セロハンテープ越しに
古ぼけた畦道から
古ぼけた幸せの匂いがする






自由詩 ふるなつの風 Copyright からふ 2004-06-09 22:51:44
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