コピー機

悲しいのか何かは知らないがよくわからないものを抱えて
コピー機の上に座ってみた
コピー機はしばらくの間ウィィィンと思案して見せたが
すぐに働き者の知恵を発揮して
ガッガガと印刷をし始めた
やがて出てきたA4の紙に私の悲しみは
くっきりと映し出された
手にとってよく見るとなんだか
不思議な気持ちを覚えたので
私はますますやる気を出してコピーを続けた
カラー 白黒 拡大 縮小
私の悲しみは 色鮮やかに ネガティブに ポジティブに
生き生きと映し出された
私は得意になって俄然やる気を見せて
コピーを何十枚もとってみた
コピー機はフル稼働して私の悲しみを量産し始めた
こうなってくると負けてはいられないと
私は悲しみのレイアウトや構成を考え始め
悲しみがより悲しみを増して見えるように
演出を加えてよりリアリティを高めて印刷した
これが心地良かったらしく私はもう病み付きになり
何十枚もの悲しみを綴じた冊子を作って
表紙をつけて 挿絵までつけて 目次をつくって
ページを振って あとがきまでつけて 配布した
知人からの反響はよろしく あと何十部もの増刷を頼まれた
こうなってくると私は俄然意欲を見せて
もう何十ページか分の悲しみを新たに増やすことを決定した
そのため私は新たな悲しみを求めて
日々悲しみ彷徨っていたのではあるが
その一方で不思議な幸福感を覚えるようになっていった
新たに出来上がった私の悲しみ増刷冊子を手にした人々は口々に 
なんてあなたは悲しかったのだろう などと涙ながらに唱えたが 
もうその頃には 私の悲しみなどはすっかりと消えうせてしまっていて 
コピー機がパンクしていたのであった



自由詩 コピー機 Copyright  2007-11-01 20:09:32
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