わたしは、あなたが思うよりも深く、沈んで、いる。
　それは深海のようであり、深遠のようでもある。
　あなたはあなたが嫌いで、いつも誰かを、装って、いる。
　あなたが誰かを装うとき、わたしはあなたの中に溢れ、じっとあなたを見守り、沈んで、いる。
　深く、深く沈むほど、わたしは冷たく、重くなり、流れ、循環する。
　それは海流のようであり、涙のようでもある。
　
　わたしがあなたを想うとき、わたしは薄く、浮かび上がる。
　浮かび上がれば浮かび上がるほど、わたしは薄くなり、あなたが見えなくなる。やがてわたしは皮膚のように薄くなり、あなたの内側に張り付き、わたしは。
　あなたであることを、装う。
　だけどあなたであるわたしは、どうしようもなくわたしでしかなくて、わたしは悲しくて、あなたではなくて、海のような涙を流して、また深く、沈んで、ゆく。
　
　あなたの内側から剥がれるとき、わたしの外は、ひどく、痛む。
　それはあなたからの痛みで、わたしは愛おしくて、痛くて、泣きながら沈みながらどこまでも、あなたの痛みに、溺れる。

　あなたはわたしが想うよりも深く、傷ついて、いる。
　それは悲しみのようであり、恍惚のようでもある。












　　　　　　　　　　　了。