夏災報知器
A道化





泡立たず
飛散した
夏の光の下
沸騰前のアスファルト
その沈黙、の蒸れ上がり
その、陽炎


提げた虫籠の中
音から立つ
蝉の
匂い
それを
汗を分泌して拒みながら


佇む体を
取り巻く夏
千切れ、飛ぶ
その流動に
おいてゆかれるものが、ある
おいてゆくものが、ある


虫籠の中、だけ
夏を濃くしてしまった罪と詰め込みすぎた夏の質量に耐え兼ねて
俯き溢れそうな眼圧には虫籠の忘れ場所としてアスファルトしか
アスファルトしか、見当たらなくて
置いてゆかれるものがある置いてゆくものがある、ありすぎて
置いてゆかれも置いてゆきもしていないと言い張ることはもう出来ず
虫籠など捨て去り名を呼び追いすがり肌を張り付かせることを欲してしまい
なのに、欲しても、欲しても欲しても確かなものはゴム草履と素足の密着だけ
嗚呼、確かなものは、ゴム草履と素足の密着だけ



佇み
ただ、眼圧、溢れ
取り巻く夏の流動に加わり
陽炎、陽炎、陽炎、陽炎
確かなものは
ゴム草履と素足の密着だけ


佇む体を
取り巻く夏
千切れ、飛ぶ
いま私その流動にて
何かに、おいてゆかれるところだ
何かを、おいてゆくところだ



2004.6.8.


自由詩 夏災報知器 Copyright A道化 2004-06-08 09:18:15
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