いきものがかり
佐野権太

どんなに鮮烈な映像も、感情も
あとからあとから
注ぎたされる
とろりとした夢水に
輪郭を曖昧にして
とらえようとするほど
淡くまぎれてしまう

過去と未来の、あるいは
前世と来世の狭間で
意識のみを
受け継ぎ、手渡してゆく存在ならば
いったい何が残るというのだろう
すべてが予定調和なら
抗う意味などなくなってしまう

それでも
あなたを愛し
深く愛し
うずくまり
小さくうずくまり
同じ瞳で見渡す世界は
朝のはじまりのような遥かな中心に
支えられているのだと
思うほど
あふれてしまう
のは
なんだ

私と同じ速さで
運ばれてゆく
緑色の濃い影の
この
ひとのような
かなしいいきものは
なんだ







自由詩 いきものがかり Copyright 佐野権太 2007-10-22 09:13:28
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