近松
1486 106

暗い森の中を走っていた
見えない何かから逃げるように
傷だらけの体を引きずりながら
静かに暮らせる場所を探していた

だけど二人は気付いていた
楽園など何処にも無いと

これから二人は鳥になり
空の彼方まで飛んでいく
不思議と迷いはしなかった
此処よりマシなら何処だっていい



縋るものさえすべて失って
迷路の中を彷徨い続けた
やがて二人が辿り着いたのは
霧に覆われた断崖絶壁

二人は互いの手を強く握り
祈るように崖から飛び降りた

これから二人は魚になり
海の底まで潜っていく
不思議と恐れてはいないんだ
君と二人なら何処へでも行ける



笑うことさえ忘れていた
二人が見せた一瞬の微笑み

これから二人は光になり
遠い宇宙の星屑になる
不思議と気持ちは穏やかなんだ
もうすぐ苦悩の日々は終わる

輪廻の呪いから抜け出せたなら
誰もいない場所で一つになろう


自由詩 近松 Copyright 1486 106 2007-10-17 00:51:53
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