秋、ふたたび
恋月 ぴの

落花することに歓びがあるとするならば
目の前に横たわる海鼠状の災禍を受け入れてみたい


あなたと
わたし
コロシアムと密かに呼び合う
誰ひとり立ち入ることの無い塔屋の片隅で
ふたり
ラケットで交わす円錐形のことばたち
それらは思わせぶりであったり
ときには失望を玩ぶような残虐さを秘めていたり

ビル風に煽られたスカートの裾を左手で押さえ

受けとめることの出来なかった
ことばのひとつが
コロシアムの床に落ち
それは過ぎ去った季節に取り残された一匹の蝉
寸分も動くことなく

透き通る羽を僅かに震わせたかに見え
思わず差し伸べた手を

遮るかのようにあなたはラケットを振るう

手など差し伸べてはいけない
誰がぼくたちのことを覚えているのか
中途半端な優しさなど捨ててしまえ

コロシアムの凍て付く空
ラケットの先で
翳り出した日差しの傾斜角を辿り

揺れるネットの向こう側にいるはずの
あなた

姿が








自由詩 秋、ふたたび Copyright 恋月 ぴの 2007-10-16 20:31:22
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