暗がりに放置された光
カンチェルスキス




チューブの歯磨き粉を踏んずけたときのような感覚が
この世をめぐりまわってめぐり殺人、故意による殺人
糞をした犬がアスファルトの上で砂もないのに砂をかけようとする
そのときの手持ち無沙汰の飼い主なんか。かたわらでわけもなく
勃起して、正直、法律なんてなかった場合、俺はやるかもって、
ふと脳裏をよぎる、スーパーの見切り品を見定めた手で、
ちんけな家族住まう団地の活気を根絶やしにする、ああ、
させてくれよ、あんたたち、放火されたがってるよ、
いっしょに焼け落ちた末にできる黒に出会おうよ、
その上を転がりまわってなんとかいい気分になろうぜ、
極の氷が溶けたとしても、罪深いおれたちは、
表面に浮いたコンビニ袋にしがみついて、
何とか生き延びていられるから、
詰め将棋に負けたときの気分のように
餃子の王将の餃子食って安っぽいげっぷを連発したりして。
見れば、踏んずけられたトマトが地面でつぶれて笑ってる、君かい?
長靴の先でくるくるまわってたエイリアンが、癌にかかって、それで
生き延びている、垂れ下がった葡萄がひと粒ひと粒落ちていく、おのずからそうなってることがこわいよ、ボタンを押して選曲を決められた、今ここで流れてる音楽は、おれの関与を認めないまま、エンディングを迎える、おれは暗がりに放置された光みたいなツラして、ケツをかき、タバコを吸う、歩いて、歩きまくって、何も見つからない、ただ方角を失うことだけができる、体重を失うことができる、
メッツの缶が風でころがって電信柱にぶつかる、そんな軽い衝撃音だけが、おれの中で響いて、やっと抗える
電子レンジの中で豚肉が解凍され終わるあいだまでの時間。






自由詩 暗がりに放置された光 Copyright カンチェルスキス 2007-10-16 11:24:28
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