蒼木りん

彼岸花が倒されていたのは覚えている
あれはどこだっけ
あれはわたしだっけ

晩飯のおかずを考える
家には
年寄りが居るから

エプロンをして料理をする
パジャマを着て寝る
そんなことをしなくなってどのくらい経つ

スズカケの木は
火がついたように紅葉して
そして燃え尽きてゆく

わたしは秋だった
金木犀が
故郷より遅れて咲く

誰にも愛されないから
誰かを愛するまねをする
恋は通り過ぎてしまったから

黄金の夕暮れ
屑藁が焼かれる匂い
とんぼの大群になりたい

わたしがいない
わたしがいる
わたしがいない

晴れた日には
ひとりでどこまでも行く
想像をする

捩れた木
嘘つきはだあれ
わたし以外の人間

時間を止めて
すすきの穂
マロンケーキと珈琲



自由詩Copyright 蒼木りん 2007-10-07 22:53:46
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