信仰告白
佐々宝砂

与り知らぬ夢とやらについては唄うまい
また妄りに愛についても語るまい

汚穢のゆきつくところは清浄な海であり
死の向こうにはただ清々しい虚無がある

だから私は信じないし
だから私は信じる

天にいます我等が父よ
御名はどこかで崇められる
御国はどこかで栄える
日々の糧は今日も与えられ
私は許し許される

しかし天にいます我等が父よ
私に試練を与え給え
試練を望むこと
それだけが私の罪



 ***



とりあえず退屈なのよね
誰か驚かしてくれない
ありきたりな快楽はつまんないし
(快楽って言葉自体凡庸だな)
出たとことひっこんだとこの話もたくさん
飽きちゃった

ねえ あたしは飛びたいのさ
酩酊も陶酔もあたしを飛ばせないから
あたしはちょいと神様にお願いしてみたのさ

ほらほらほら
淫猥なマリアさまが
アンの豊かな膝のうえで
放埒な息子を胸に抱いてる

でもとりあえず退屈なのよね
新しいことを言ってちょうだい
誰もしたことないことしてちょうだい
交わりなんて所詮は機械運動じゃないの
一度じゃ足りない 二度じゃたくさん

ああああ
なんて退屈!



 ***



うーむ、結局あのひとに頼るほかないのだな、
してみると私が書き散らしたこの断片は何なのだ、
何の役にも立たないアホな切れっぱしか?
だが私は凡庸を怖れる。神よりも悪魔よりも。

   闇を知るためには光を見なくてはならぬ。
   どちらを好きかということはさておいて。

ところがあのひとは光の側にいるのだ、地獄堕ちの癖に。
しこうして私の目は光に向かざるを得ないんだが、
眩しくてかなわんのだ、サングラスが必要だ。
後光はもののかたちを歪める。私は歪みを愛する。

   悦楽の園には新鮮な露滴る苺が実る、
   どっこい私は苺アレルギーだ。

うーむ、やはりあのひとがいないことにはどうにもならん。

誰か扉を開けようって気概のあるやつはいねえのか、
泥まみれの顔を上げて私は吠える、破れた服を脱ぎ去って。
単純な歓びは単純なひとびとに残しておく。

   さらば。






2001.04.24


自由詩 信仰告白 Copyright 佐々宝砂 2007-10-06 22:50:23
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