空へのぼる音
ふぁんバーバー

お葬式の帰り
タクシーでいっしょになった
あまり仲良くなかった美代ちゃんと
彼のおもいで話をしようとしたけれど
たいして
覚えてることなんかないねって

シャッター通り
そういえば
このへんでストリートライブやってたなあ
ストリートって…
つい笑ってしまった
美代ちゃんはあいかわらずとてもきれいだ

近づけばコンプレックスばかり
ふくらむみたいで
たまに話しても
緊張してあわあわしたり
そんな美代ちゃんと
いまは普通に話せる

死んでしまった彼は
どこといって目立つことのない
ただ音楽が好きな男の子だった
ひさしぶりに同級生が集まったけれど
だれも
彼の悲しみにこころあたりはなかった

いま幸せ?
美代ちゃんに聞いてみたって仕方ないのに
うつくしい横顔に声をかけたら
そんなにいいことはないよって
だれだってきっと
そうなのだろう

わたしもおなじ
たいしていいことはない
でも死んでしまうほどの悲しみもない
みんな同じくらいの歩幅で
同じくらいの高さまで
待ったり
待たれたりしながら
生きてゆくのだろうと思ってた

タクシーを降りて
美代ちゃんをお茶に誘おうか迷ったけれど
急ぐからって嘘ついて
先に電車に乗ってしまった

空は澄んで
すっかり秋の気配
美代ちゃんには美代ちゃんの悲しみがあるように
だれもわたしの悲しみを知ることはない
たぶんわたしじしんさえ

彼が歌っていた歌を思い出そうとしたけれど
けっきょく
思い出せないまま
眠ってしまった











自由詩 空へのぼる音 Copyright ふぁんバーバー 2007-10-06 10:04:42
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