統制
狩心

私は電気椅子に座って
頭をケーブルで繋がれ
闇の世界を支配している
一つの生贄は
民衆の意思によって
何時でも処刑する事ができる

暗闇の中
力なく項垂れた女の
十メートル後ろをついて行く
その距離は常に等距離で
縮まる事も遠ざかる事もない
そうやって均衡は保たれていた

沈黙と静寂
一つの犠牲者
私は目を閉じたまま
ケーブルから流れてくる電流に従って
世界を構築した

住宅地の片隅に設けられた
鬱蒼と生い茂る森に
獣達は追いやられ
夜な夜な遠吠えを上げる
奇形の姿を持ち
傷口は破裂し
青とも緑とも言えない血を
止め処なく流し続ける

私は森を住宅地の方へと
ゆっくりと拡大していく
人々は追いやられ
獣達の姿を光の下で直視する事になる

ある者は武器を持ち、応戦する
ある者は平和的解決を望み、対話を試みる
ある者は遠い地へと、逃げていく

私の役目は
干渉し合っていないもの同士を
干渉させる事にある
その策略の下
戦火が広がり
収拾がつかなくなった頃に
私は救世主のように現れて
解決へと導く
人々も獣達も
始めから仕組まれていた劇だという事を
知らないままに

暗闇の中
女は倒れ
私はやっと追いつく事ができる
倒れた女の手に握られている一枚のチップを
頭に挿し込み
私はまた
権力を拡大した

私を監視する衛兵達を
少しずつ機械化していく
ケーブルで繋ぎ止め
電流を流す
それで大抵は大人しくなる
大人しくならない者には
電流を少しだけ強く流せばいいだけの事だ

ケーブルは既に
町中に張り巡らされている


自由詩 統制 Copyright 狩心 2007-10-04 20:57:59
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