僕らの青い鳥
楠木理沙

そういうことが言いたかったわけじゃないんだ
それは君に対してだけじゃなく 僕に対しても言ってるんだけど
分かるなんて言って欲しくないよ
だからって分からないなんて言って欲しくない
ただ僕は今までの僕じゃないし これからの僕も今の僕じゃない
でもそう言ってる今の僕は紛れもなく今の僕なんだ
たぶんそういうことなんだ

やり直したいさ いくらでも
でもあの選択をしなければ君に出会えたって言えるかい
今の君に出会えたって言えるかい
いや そういうことじゃないな
結局 今の君がいるのは今の僕がいるからで
その逆でもあって
だから 幾千もの「あの日」に取り得たはずのまばゆいばかりの選択肢も
全くもって意味を持たないし
意味を持ったとして そのときの意味は 
今ここで言ってる意味とは 意味の意味が違うってこと
たぶんそういうことなんだ

ここから始めるよ
肯定的なわけじゃない
始まっているんだ いつだって
始まりながら終わりに向かっている
もちろん そこで言う終わりが終わりかどうかは 相当怪しいものなんだ
だから 終わりから始まるなんて言うことほど下らない言い草はないんだよ



そばに居てくれないかな そう言わせて欲しい
そばに居てくれと言って 君が離れることもあるだろう
いなくなれと言ったおかげで 君がいてくれることもあるかもしれない
だけど それでいい
どちらにしろ結論はひとつしかないんだから 

こんなはずじゃなかったって思う
多くのものを無駄にした気がする
すべてのことに意味があると誰かが言ってた 
でも そこに散らかったゴミくずを抱きしめることは
今の僕には出来ないんだ
だから決めたんだ

青い鳥を探すんだ
そばにあるゴミくずに青い鳥を探しはしないさ
いつか草むらで寝転んでいた僕に
ふざけて乗っかってきた君の顔の背景に浮かんでいた
泣きそうになったほどの青と同じ色の鳥
そいつを探すんだ

見つけたそのとき ゴミくずは色を帯びるはずなんだ
何色だろうね
君の好きな黄色がいい
目がチカチカして 泣いてしまうかもしれない
でも そのときは泣き喚きたいときなんだ

ねえ青い鳥を探すにはグレーテルが必要なんだ
グレーテルになってくれないかな
彼らは兄弟だったけどそれは好都合なことなんだ
僕らには新しい物語が必要なんだから
新しい青い鳥の物語が必要なんだから







自由詩 僕らの青い鳥 Copyright 楠木理沙 2007-10-04 04:15:28
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