三つ編みの手
服部 剛

昨日は忙しい時間に 
トイレに座らせたお婆ちゃんの 
下ろしきれなかったパンツが 
お尻と便座に挟まって 
無理に脱がせると 

  びりり 

両手で持ったパンツには 
小銭の穴が破れて開いた 

仕事を終えた 
明かり一つの部屋にひとり残り 
渋々と始末書を綴る
「今後はていねいに脱がせます」 

今朝は早番だったので 
いつもより早い電車に乗ると
向かいの席にはセーラー服の少女が 
「今日は日直」と書いた白い手で 
黒髪をていねいに編んでいた 

少女は 
今日という日の日直を 
ていねいに編んでゆくだろう 

大人のふりをして 
少女をみつめる僕の手は 
昨日始末書を書く時に 
忘れかけていた
「ていねい」という字を
思い出そうと書いた 
出来損ないの漢字が 
すでに薄くなっていた 





自由詩 三つ編みの手 Copyright 服部 剛 2007-10-02 19:46:43
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