でも まだ だ
砂木

稲刈りをしたら稲についた菌が
米粒を石のようにころころにしたのが
意外と多く
出荷前に手作業でつまみだす
ついでにゴミも

ゴミ
と言っても うっと手が止まる
米の中 菌のころころと一緒に
虫の首やら足やら羽も混ざっている
機械で稲を刈るものだから逃げ遅れて
巻き込まれて ばらばらになって
ゴミ ゴミか ゴミだなあ

指で掴めないなどというのは失礼だよな
ごめんなどと思わねばな
供養だよねと夫に言うと
佃煮だと思え という 食べるだろ同じだと

うんそうだね 私は食べる生き物だし
かわいいといわれながら食いちぎられる
食物連鎖の弱者にはなりたくない
潔く ゴミよ ゴミはゴミよと
ころころとした菌と一緒に つまんで捨てる
の だが 首め

いつかみた とんぼの頭
虫取り網に頭だけひっかかって でも
何事かぱくぱくと口を開けて怒っていた とんぼの頭

動かない虫の首が 羽が 足が

菌がついている
晴天の秋の田んぼは 黄金色の実り
虫も 風も 涼やかな季節の中

しめ殺される米粒の悲鳴も
実りの餌食になった虫の死骸も
ゴミかゴミならゴミだゴミゴミゴミ

そして何事も気づかないで喰らっている
私をすすっているのは 何菌なのかな



自由詩 でも まだ だ Copyright 砂木 2007-10-01 22:38:10
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