Quest
塔野夏子

練習船
黒い尖塔
木馬の何頭かを失ったまま
メリーゴーラウンドは廻転している

空はいつでも鋭角
時折少年が墜落してくる

旗竿の上で
燃え尽きる旗
その下でそれでも昏い宴はつづく

遠くの丘の稜線を
行進するアルルカンたち
ひとり残らず
仮面のような極上の冷笑で

――探している
――何を?

ざわめきだけが対流する
虚ろな街路
練習船
黒い尖塔

ゴンドラのいくつかを失ったまま
観覧車は廻転している
墜落してきた少年は
次の瞬間にはそれを忘れて
歩きだす





自由詩 Quest Copyright 塔野夏子 2007-09-29 09:49:25
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