そこら
捨て彦


平日


関西には大阪という名前の大きな猫がいて
背中に通天閣を生やしたり
わき腹に天王寺を縁取ったりして
とても猫とは思えないような奇声を発しながら
のそのそと同じところを行ったり来たりしている

昼間から飲み屋に入って酒をたらふく飲んでいると
見知らぬ隣のおっさんが
うしろにいる女を指差して
擬似的に 犬でありつつ 猫である
って酔い目でこっち見て詠うのだけど
その日以来
おっさんの
縦に動く喉仏が、ああ、頭から離れなくなって

ほんと
困っちゃうな修羅







平日


右の目が
瞼の裏あたりからさらに奥、
眼球の中心部分に近づくにつれて、
徐々に温度を増していく
僕は
地球の気温とは全然関係無いところで
熱い頭を潰れるほど抑えてしまう
このぶんだと
ジャンジャン横丁の電柱に寄りかかって
ちょっと休まなくちゃならない
勘弁してよ今からメル友と会うんだって
( 勘弁してよ今からメル友と会うんだって )

ほんと
困っちゃうな修羅







平日


叫びのようなそうでないような
女の声は
パトカーのサイレンに消されて夜に紛れる
ゴミ箱が
街に置き捨てられている
通天閣のそば
あたりはグレーのような紺のような危険なような張り切っているような
胡散臭いような夜が密集している
後ろから足音が聞こえて
僕はできるだけ視界を閉じて遠くにほおリ投げる

おいおい、ちょいまった
ゴミ箱に捨てようとしてる手から
ダイレクトで持っていくか普通?

ほんと
困っちゃうな修羅





自由詩 そこら Copyright 捨て彦 2004-06-03 01:46:31
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