残像花火
ブルース瀬戸内

じいちゃんの言うこと分かるやろか。
人生なんてな
花火というか
花火の後の残像のようなもんやからな。

なんて言うのは
少し寂しいやろか。

でもな
寂しいところに人生はあるもんやって。
みんな、気付いとるんやけどな
それを認めるんは
それこそ寂しいやんか。

じいちゃんの言うこと分かるやろか。
あの大輪咲かせとる花火のな
残像の中で躍起になっとると思うと
そりゃ、はかないにも程があるわな。

でもな、あの中で四苦八苦して、
なんとかきらめこうとする姿はな
実体たる花火より美しいと思わんか。

美学なんかに命懸けんでもええのになぁ。
人間ってな
愚かで、かわいい生き物やから。

じいちゃんな
ええ残像になれとんのかな。

今度な、花火しよか。
近くのスーパーにセットが売っとる。

線香花火はあかんで。
縁起悪いからな。

ほんならもう8時やから
じいちゃん、寝るわ。
激烈に眠いわ。
すべてが残像に見えよる。
また、電話するわ。


自由詩 残像花火 Copyright ブルース瀬戸内 2007-09-20 22:06:35
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