いつもただ考える
nm6

話し相手をさがす。空白は濃度の問題で、強い時間に埋もれるほど離れては胃の中で体育座るかのような空洞、そう、空洞にも逆説的な密度があって、クラクラとしては見失ったスタイルに慣れて、ぼくらは文字通り緩い財布にゆらりと寄り沿う。そしてジョグダイヤルとビールに耽る夜。立ち上がって勘定を済まし、空回るほどハイスピードの自転車はタクシーに突っ込む妄想で、若いぼくらは瑞々しく散るだけだ。それもこれもあれもどれも誰も彼もがすべて嘘で、そう、ただぼくらは酔っているだけなのかもしれない。


いい加減に散々だ。空白は深度の問題で、鉱脈を掘り当てたら終ることを回り道回り道してリーチを避ける端点、そう、端点にも逆説的な面積があって、広いなと呟いてはその鋭利な切れ味に切迫して、瞬間的な不安を揉み消して立ち上がる。それでもジョグダイヤルとビールに耽る夜。俯して突然背筋をはじめれば繰り返し上下する限界に、手が届くことと手に入ることの圧倒的で甘美な違いについて考える。それもこれもあれもどれも誰も彼もがすべて嘘で、そう、ただぼくらは酔っているだけなのかもしれない。




 あ。ああ。
 そう、この感じだ。これなんだ。
 今だ。
 まさしく。まさしく今だ。
 今。この、今。
 今ならば、ちょっとだけ、
 ほんの少しだけ、死んでもいいと思う。




強い時間に埋もれるほど離れては胃の中で体育座り、鉱脈を掘り当てたら終ることを回り道回り道してリーチを避ける。空白は濃度と深度の問題のジョグダイヤルとビールに耽る夜、眺め続ければいつもいつまでも嘘のように過ぎてゆく。漏れる隙間もそのままにいい加減に散々で、鬼気迫ることをしなさすぎてそれでも昇ればいつかはオレンジで、歩けばいつかはどこかへ着くので独りよがりは誰しもだ。逆説的で圧倒的であるがゆえのささやかな甘美で、ぼくらの毎日はいつもただ考えている。そう、ただ、いつも考えているだけだ。


自由詩 いつもただ考える Copyright nm6 2004-06-02 01:06:46
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