(無題)
キキ
指をひらくと
きのうの夢がこぼれ落ちた
わたしたちは
月の公転ぐらいのスピードで
どんどん忘れていくのだから
泣かなくてもいいのに
と言いたいが
きのうときょうの
ことばを全部書き残して
あと何ヶ月か泣き暮らし
正月を迎えて
わたしの頬はいろんな色に輝いて
温かかったと
言うんだと
そんなことをこぶしに閉じ込めていたみたいだ
どこからかやってくる
冷たい風が
ふくらはぎにふれていく
あれをつかむために
わたしは手をひらいたのだ
とおもう
ひどいことなどない
わたしたちには眠りがあって
眠りのなかでは
おなじように手を伸ばしているけれども
その手は届かずにいるけれども
わたしたちには目覚めがあって
目覚めた先のどこかにかならず指先は触れている
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(無題)