えうろぱ
山中 烏流
響こうとして、やめた
あの鐘の試行錯誤が
静かに鳴っている
レンガ造りの壁/床/屋根
その全てに
すべからく神は宿るのだと
その象徴として
誰かが、何処か遠い場所で
十字を切った
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えうろぱ、
私はそう読んだあと
それが何を表すかも知らず
ただ、響きに憧れていく
首から下げた
安物の十字架に触れる
それは神聖なようで、
冒涜にまみれたことだとも
気付かないままに
空気を揺るがすのは
私の息と、お気に入りの歌と、
それから
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始まりの光に溶けた
水平線と/空の境界面は
鐘の音を待ちわびながら
一つに交わっている
海が母なのだとしたら
空は父なのだろうか
私たちはみな、
その交わりを経て
生まれたのだろうか
(降り注ぐ雨は、
(種子なのかもしれない
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えうろぱ、
温かい頬に触れたのち
それが絵画であることに気付き
恥じらいを覚える
林檎をかじることが
罪なのだとしたら
この頬の火照りも
罪ではないのだろうか、
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陽光
見開いた目を、刺している
私は部屋の隅で
朝の
足音を知る
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えうろぱ、
鐘はまだ
静かに鳴っている。