世界の終わり
アオゾラ誤爆
パンの匂いが、する
カラスの鳴き声で割れた
やわらかい世界の殻
甘い時間をむさぼったあと
すべてが失われていくまで
もう僅か
あなたは足の指の先まで
すっかりふやけて偽物みたい
壊れた温度でわらってる
どこかで狂った犬が
なく
・
だらだらと続くだけの日々に
そろそろ背を向けたいのと
慣れた手つきで紅茶をいれる
悩ましいくすりゆび
くっきりと焼けた指輪のあとは
まるで切り傷
美しい模様
滲んでいく太陽の軌道を
追いかける
あなたは
さっきから窓の外ばかり
気にしてる
なんだか今日は街のいろが
すこしおかしいみたいだ
空のいろが
いつもより鮮やかに見えるんだ
そう言った焦げ茶の目が
ぐるぐると空中をさまよう
これで最後なのと告げた
私のこえすら聞こえない
そぶりで
・
世界の終わりはまだこない
黒々と散らばる点
羽根のない鳥たちが
急降下でゆうがたを裂く
やっと視線をしたにうつせば
ことんと軽く鈍い音
ぼんやりと視界にひそむ
少女のようにか細い腕は
やけに正確な仕草で
ベージュのほうのマグカップにだけ
真っ白な結晶を沈める
それでいい
砂糖はきみに似合わない
ぼくだけがスプーンを手に取り
ぼくだけが甘みを溶かす
それがいい
・
からになったピンクのカップ
あなたは猫舌だから
その紅茶を飲み干すには
まだすこし時間がいる
急かすつもりはないのだけれど
平べったい東の空に
赤い月があらわれたこと
いおうかどうか少しだけ迷っている