循環する夏のぷろぺら
佐野権太

後退する夏の左腕をつかまえて
さみしがる頚動脈にあてがい
しずかな熱をからめる

満たされては退いてゆく
寝息の揺りかご
いちばん弱い部分は
あずけたままで

届かないエアメールの
滞空時間に寄り添えば
寝台ごと
ふうわり昇ってゆく

とても
とてもうすく
広がってしまうから
すくって
なんどもすくって
尾ひれからじょうずに

わかってる
わかっているの
ぷろぺらが
うまくいかないから
ああ、ぜんぶ
ひらがなになってしまう

ねえ
つぼみをひらいて
ひらかないで







自由詩 循環する夏のぷろぺら Copyright 佐野権太 2007-09-06 09:38:18
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