夏のあとがき
佐野権太

青や緑の絵の具を
うすくのばして
あの透明をあらわそうとして
さっきから
なんども失敗している

手をひいて
石を渡る
ぬらりとした光沢に滑らせた足を
からだごと、ぐいと引きあげる

辿り着いたせきは、ためらうこともなく
だおだおと流れおち、白い飛沫を踊らせる
清らかにえぐられた淵に
ゆっくりと蓄えられてゆく、みどり

みて―――にじ
え、どこ、どこ
ほら、あそこ

シャババババ
水の跳ねる音がして
振り返ると
おしりから流れにしゃがんだおまえが
頬をぬぐって
まぶしそうに
笑った

薄く削られてゆく氷の音を
覗き込むおまえは
最後に残る
透きとおった円盤がほしいのだろう
イチゴのシロップは
瓶の底に
もう、わずか

シャン、シャン、シャン
車輪を回すような
かすれた蝉の鳴き声

四角い窓からこぼれる
いくらか和らいだ風に
そっと
ほほえんでみる







自由詩 夏のあとがき Copyright 佐野権太 2007-09-04 10:54:43
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