逃げ切れない
ふもと 鈴

 胸躍るにがさに紫倒れる傘さして
 どこでもない道歩くとき
 行く手をさえぎる風圧が
 わたしの足元すくっていく
 人の多さにすりぬけもせず
 わたしのもとにとどまり続ける
 葉の落ちる速度
 風の怠慢 遅すぎて目の痛い
 
 とにかく

 駅のある階下へと足をむける
 にあたって傘を閉じて
 人の群れも閉じられていく
 
 風圧と呼んだのは恋人 
 私という一人称さえ剥ぎ取って
 でこぼこな時間を泥だらけにした
 型どりなんてしない非日常
 私のすべては忘れ去られていた
 取り戻すべきではない 倒れるむらさき
 蝶の群れを紫とよんだ



未詩・独白 逃げ切れない Copyright ふもと 鈴 2007-09-01 20:56:45
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