ルミ
亜樹

日が沈んで暗くなった空に
一等先に光ってる
あれが金星だよ

そう言うと
君は
そんなの知らない、と言ったね
学校で習ってないから知らない、と

ねえ、ルミ

その言いようが、なんだか少し、寂しかったんだ

ねえ、ルミ

確かに僕に星の見つけ方を教えてくれたのは
学校の先生じゃなくて父だったし
チューリップの花言葉を教えてくれたのは姉だったし
紫陽花の花の色と土壌の関係を教えてくれたのは祖父だった

ねえ、ルミ

だからって僕は別に
学校で学ぶことはくだらないことだなんて言わないよ
学校で学ぶ多くのことの何か一つは
必ず君の未来と繋がっているから

ねえ、ルミ

だけれども、君は今
学生という身分に縛られて
学校という小さな社会が
この世の全てだなんて思ってやしないかい?

ねえ、ルミ

君はどうして空が青いんだろうとか
目の見えない人に空の色を伝えるのになんて言ったらいいんだろうとか
そんなことを馬鹿みたいに考えたことはあるかい?
自慢じゃないけどこんなでかい図体をして
僕はしょっちゅうそんなことを考えている

ねえ、ルミ

君は周りの誰かと
必死になって足並みを合わせすぎて
その随分と長く伸びた手足を
ムリに縮こませていやしないかい?
そのままじゃきっと骨が歪んでしまう
そんなにたくさん成長できるのは、多分今だけだと思うのに

ねえ、ルミ

確かに僕は君と違って
誰かと足並みを合わせるのが苦手だった
自分が好きなものを捨てることができなかった
自分が嫌いなものを好きなふりもできなかった
だから、君に比べて僕は随分と友達が少ない

ねえ、ルミ

でも、僕はレオ・レオニや宮沢賢治やシューベルトが好きだった自分を
間違ってたとは思やしないよ
少なかった僕の友達は10年経っても全員友達だった
20年後も友達だと思うよ
君のはどうかな?

ねえ、ルミ

君は最近やってるいじめがテーマのドラマが好きらしいね
僕は嫌いなんだ
だって例え嘘ごとでも
小さな女の子がひどい目にあってるとこなんて見たかないし
漫画ならお約束のように訪れるその後の救済は
現実ではなかなかないと知っているから
それは、きっと君も同じだと思うのだけど

ねえ、ルミ

世界は多分、すごく広いよ
そうして、きっと
僕よりずっと後に生まれて
僕よりずっと小さな君は
僕よりずっと大きな世界に旅立ってゆくのだと思うんだ

ねえ、ルミ

だから、学校で習ってないから知らない、なんて
そんな寂しいことを言わないでくれ
それなら二番星はなんなの?、なんて
瞳を輝かせて僕に聞いておくれ
お願いだから

ねえ、ルミ


自由詩 ルミ Copyright 亜樹 2007-09-01 14:48:58
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