ベランダの季節
バンブーブンバ

ベランダを
君は
どのように名づけていたのか
知らない
ただ 
白い部屋のなかに
そこは
紛れもなく
草原だったんじゃないかと
僕も
一輪のガーベラ
十分だったから
ようやく 
君の視線
辿れるような気がして
ひとつベランダをはさんだ向こうに
日脚を追うようにして
そよぐ君
遠き白い山と重ねた君を
眺めた
両耳から赤いウォークマンのコードを垂らしていたね
それから
スキンヘッドだった
もちろん知っています
上の手から列車が朧な反響をひろげたから
かよわい鼻筋や首筋をなぞることができた
可憐な黒い線を
肩に掛かるくらいに
描いてみせた
しばらくして脈拍の高さに点滴を換えられてしまったことがあった
恋をしてるんです
笑われた
異形鉄筋を白く染め上げた
一坪ほどの冷たい場所に
小一時間も佇む理由を
血液検査から探しているようだった
雨の日が続いた
天井の穴を数えきってしまうほどの時間がすぎた
ようやく訪れた明るい朝
ベランダへ起き上がろうと
カーテンを撫でた
瞬く時間に
廊下が似つかわしくない足音に
あふれた


ベランダは
一輪のガーベラで
十分だった
ただ、
赤いコードを
たおやかに揺らした
君の調べを
ガーベラのさえずりに
のせるほど
若くはないけれど
祈ります






自由詩 ベランダの季節 Copyright バンブーブンバ 2004-05-27 22:45:34
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