あさがけ
水町綜助

深夜
三時半過ぎ
とじた商店前の
歩道にはパンの固まりが落ちて
蟻が数え切れない
ボヤけた視線を落とせば
地面が動いているよう
川のように
列をなして
五つ
うねって
さまざまに
伸びていく
先に
巣があったとして
もうすぐ朝がくる
どこもかしこも
暑く照らされる
巣の中は涼しいか
ぼくはジュース
をのむ

*

松葉杖を使わないで

真横を
二つ、
両手に、まとめて抱えて
はたちくらいのおんなの子が歩いていく
おぼつかない、内股の角度が
なんだか鳥のようだ
街路灯に白くあたまを照らされながら
歩いて
駅まで行って
戻って
もうすぐ、朝がくる
サンダル
ひっかけた
足に
朝がくる

*

四時
もう疲れた新宿
穴の開いたチーズから
ぞろぞろひとがでてくる
それぞれ腕には時計があって
たぶん水晶がはいってる
草むらみたいに揺れればいいのに
もうすぐ電車が出発するよ
ターミナル駅から
しずかにうねって

*

五時十五分
空は曇ってた
日曜日になった
わすれていた蝉が鳴き出して
夏だった
目の前を黒い犬が
赤い舌を出して
はしりぬけた
ぼくは河原にきていて
埋まっている石には
それぞれの名前と
沢山の
ひょっとしたらどうでもいいことが
書かれていて
黒い字で
ぼくはいちいちそれを読んだ
指で摘むみたいに、読んだ
それで、ぼくも
何かをかこうかとおもったが
ペンが無く
小石で引っかこうかとさがしたが
釣り人が来て
なにをしているのか
と尋ねるので
やめた





自由詩 あさがけ Copyright 水町綜助 2007-08-26 07:16:15
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