つばさ みどり Ⅱ
木立 悟




目から水を飲み
花になり
やがて言葉に
うたになる


数歩のぼる風の音
ひとつひとつの段の上に
しずくを含んだしずくが震え
空を囲む樹を映している


触れてはこぼれる夜の明るさ
数えることさえ忘れつづけて
指は水になってゆく
夜は水になってゆく


生まれつづける蛾のなかに
蝶の羽を持つものがあり
蜘蛛の巣をふちどる朝の光
打ち寄せる原のかたちを見ている


石の段を水が流れ
道は暗い緑にひかる
大きな大きな朝の手まり
午後の手のなか しずくにかえる


花とうたは坂を下りる
夜が川を流れ来る
まぶたとまぶたへ沈む星
左目の下にひとつはばたく


髪からあふれ ふたたび朝の
青の手となり さよならを振り
流れても流れても色になり
言葉を迷い 言葉に残る


昼をくぐらず午後になり
山を馳せる曇は銀
沈む星を聴くしずく
左目の下を飛び去ってゆく


こぼれる 消える まばゆさは
皆ひとつの同じ色
うすめすぎた絵の具にまじり
つながりとめぐりを描いてゆく


遠い雨をゆく遠い傘
しずくがしずくに生まれ出る音
花と水と言葉の輪
蛾の片羽に重なってゆく














自由詩 つばさ みどり Ⅱ Copyright 木立 悟 2007-08-25 19:19:18
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