飛行船に乗って
長谷川智子


だれかの温かい手につられて
また踏んだあの甲板
そう 見なれた茶色くまぶしいところ

窓の外はお祭りさわぎ
色とりどりのじゅうたん 花畑のような
いつもぱっとしないこの町もこの日だけは色めき立つ
ああこんなことなら先にキャラメルポップコーン買えばよかった
あとのまつり

温かい手のぬしの指先が窓の一点に注がれた
ごった返しの空間少し離れた一角に紙芝居小屋
ここはうってかわって空いていた
ここにぽつりぽつりと座っている子供たち

「さあおはなしのはじまりはじまり〜♪」

小さな箱の幕が開いて拍手の波
のぞいている双眼鏡のアングルをしぼった
そこには・・・

鉄人28号
ワンダースリー
ひみつのアッ子ちゃん
            に始まって
ドラえもん
ガンダム
クレヨンしんちゃん

そして・・・

昔住んでたぼくの家並み
町並みよりも小さくて 風がぬるくて心地いい
あ、あの子もこの子もどのこもみんな なつかしい
あ、あんなこともあったな
あ、こんなこともあったな
まぶた閉じれば いろいろおもいだす

だれかの温かい手につられて
また踏んだあの甲板
そう 見なれた茶色くまぶしいところ


自由詩 飛行船に乗って Copyright 長谷川智子 2007-08-14 01:09:43
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