はだかになりたい 
服部 剛

旅先で出逢ったひとと 
うまい酒を飲んだ日は 
深夜にひとり戻ったホテル部屋で 
まっ赤な顔のまま 
はだかになりたい 

ベッドの上で 
パンツいっちょう 
はだけた浴衣 
へべれけに 
ましろい壁に背もたれて 
歯を磨きながら 
ついさっきタクシーに乗り 
家に帰ったきみの 
名残惜しげな横顔を 
かみしめる 

半年ぶりに再会したぼくら 
郷土料理を盛った皿の上に 
互いに伸ばすかいなの橋を架けて 
長い距離を越えて出逢えた夜に 
グラスを重ね 
(本当にうまい料理) 
について語り合う 

「うまい詩が書けなくて」 
頭を抱えたふりのぼく 
「うまくなくてもいいじゃない」 
さらりと言うきみ 

2日前の誕生日に 
可愛い後輩にハート形の色紙をもらい 
先輩にギターで祝いの歌を弾き語られ 
お客様に日の降りそそぐ森のカードをもらい 
ほしいと言っていた香水をぼくにもらい 
周囲の誰もが微笑むような 
素敵なきみと我が身を比べ 
歩いてきた平凡な日々の道程は
振り返ると、しなびていた 

旅先の 
ホテルの個室で 
まっ赤な顔してパンツいっちょう 
はだけた浴衣のまま 
壁にもたれた 
電源を入れないテレビ画面に 
薄く映っているふぬけた自分を 
洗い流すかのように
歯ブラシをしている 

( 今夜僕は求めてやまない
( 愛のないせっくすよりも 
( 心ふれあうほうようを   

本当は今
このベッドの上に 
すべてを脱いだ 
素顔のきみがいてほしい 

はだかのきみが、いてほしい。 





自由詩 はだかになりたい  Copyright 服部 剛 2007-08-04 04:29:35
notebook Home 戻る