鏡という王国
千波 一也



昔、
暗やみがまだ
鏡の名前を持っていた頃は
安堵という美しさが
ありました

魔性は
ていねいに拒んでいたのです
だれかの
定義の外側を
上手に棲んでいたのです


 きみは
 住人ですか

 無実の仮面を
 おそれるあまりの
 来し方ですか
 群れますか


磨いてゆかねばなりません
問いかけを待つ
真実を

疑うにせよ
追いかけてゆくにせよ
磨くということの
その意味を
重ねてゆかねばなりません

それはどこか
傷と似ていますが
同じことにはなりません

過不足なく
主従の関係にあるのです
この王国をあかす
語り部の
全てに


 きみの順番は
 どれくらい最後でしたか


今、
捨てがたく匂うものは
光の仕草だったかも知れません
道筋としての迷いのような
愛するべき帰属です
否応なく







自由詩 鏡という王国 Copyright 千波 一也 2007-08-03 08:20:43
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