本屋にて

丁寧に陳列された人々の隙間を歩けば
子供売り場には小学生が男女別に並んでいる
わんぱくそうな男の子を手に取ると
お腹をペロッとめくって
臓器の色合いをチェックしている御婦人
その隣りでは
行列の多さで評判のラーメン屋の御主人が
若いカップルに腕前を披露しながら
食べたかったら店までおいで、
にこやかに微笑んでいる


成年向けの売り場には
大股開きの裸婦が狭い間隔で並べられていて
額にタオルを巻いた眼鏡の男性が
ぶつぶつと何かを呟きながら
奥に隠れていた幼女の尻をレジへと運んで行く
レジ傍には今日もブッシュが座っていて
誰も何も言っていないのに
高尚ぶった演説を繰り返している
けれど案の定
無視されるばかり
その真横で暇そうに天井を見つめる小泉総理
唾つけた指で おばさんに
摘ままれる舌先から
ぺらぺらと、
めくる度に流れるチープな演説
店内に、響かない


哲学している老人の脳味噌の皺という皺を
丹念に数え続けるサラリーマン
着飾った衣装を振り撒くモデルに恋をする少女たち
数知れない人々が
今日も売り買いされている傍で
あちこち皺くちゃの賞味期限を過ぎた何人かは
極めて作業的に返品されて行く
綺麗なまま
返品されてく人も居る


そんな人々の陳列の先頭では
今日も高らかと、愛を叫ぶ青年が持て囃されていて
まるでそこが、
世界の中心みたいに見えた


片隅で じっと座っている群衆の中の一人を
掴んだ女子高生が
つまんない、と吐き捨てる
売買する側も
される側も
互いが一方通行の思惑を
金銭を介して成就させている光景の中に
ぽつんと予約席の狭間から
あくびを、ひとつ
呑気な彼女を袋に詰め込んだ店員は
ありがとうございました、
丁寧に頭を下げている



僕はと言えば、
こないだ出たばかりのゲームの攻略法を
ガキんちょ相手に
得意げに語らう毎日だ。



自由詩 本屋にて Copyright  2004-05-23 09:35:14
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