おとずれる
こしごえ




予報は雨

(真昼)
あらがえないの
この時計の刻む
奥底からきこえる声には
自性が宿っているのだから
茫洋として連なっている先へ
零時の胎動しているのは不在
の影が失われた地平線となって
私を立ち尽している
ゆらぐ太陽にきずついた
青ざめる水晶時計の回折

(真夜中)
どこかで半鐘が鳴っている
月虹のもとで
燃えさかる炎の円舞が
誰もいない この部屋で
ささやきの形象を焼きおおせる

やがて
きのうの残り火が
境界線へ点火して雲のむこうがわへ
あざやかな朝日の産声をかたちづくる
その時 初めて私は
かたち無い吐息に従属できる

遠い
すぎ去った日々はいつも
いいわけのできない まなざしで
宙へ
ゆれながらただよう(果てしない不問

こたえがどこにもないので)いいえ
つきしたがう歌声があるはず
涙の しずけさを灰へかえした回帰線で
うらがわの時空が歪みはじめて
霊柩車が
群集のあいだでクラクションを間延びさせる

ええ えぇ
お願い致します……
だのに
予約席はむなしくあいて
むこうがわからつづく
理由で
食事をしている
群集はとめどもなく咽下しておりました

しめった闇に ぽうっ
とついたゆらめきは
いつまでも脈動できるのかしら
あらがえないのです
さびしさの骨格となっても
たしかによこたわっている空の淵で
鳴りやまない私の叫び

どこかで
個人が個人でいられるのは
すべてがつながっているからでもあり
ムダに私でいられるというほど
光に重さはないの
あぁ廻るまぶしさ!
かるい眩暈をくりかえす

きっと しずかなおとずれなのでしょうね
火葬場にて
煙が、ひとすじ









自由詩 おとずれる Copyright こしごえ 2007-08-01 14:11:24
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