プールサイド
夕凪ここあ

五時限目の
けだるい
プールサイド
微熱の
水飛沫と
君の呼吸が
うまく
混ざったら
わたし泳いでも
いいよ

反射していく夏
十七歳のまま
立ち止まって
しまえたら
どんなに
いいだろう
切なくなっても
好きでいられる
のに

波立つ水面に
魚の群れが
見えた気がした
ほら
二十メートルほど
行けば
見える予定
綺麗なうろこの
一枚に
隠した
こくはく

裸足の爪先に
透明色の
ストローク
あっけなく
水の底で
ことばは
形を持って
泳いでいくところ
ずっとずっと
遠くの方で
先生の低い声
生温い
教科書の朗読
みたい

あしたも
あさっても
十七歳でいられたら
十七歳でいることに
なんだか
むしょうに
切なくなって
濡れたまま
プールサイドで
待ってる
きっと

少しだけ
震えるくちびる

を発音しようとして
もう水音
しっかり
目は
洗いましたか
魚になりたく
ないのなら

ねぇあの日
うまくターンが
できないままに
夏は
わたしたちを
追い越してった
おどろくほど
簡単に

わたしまだ
泳ぎきれないで
うなじあたりに
懐かしい
塩素の匂い
三番コースで
拾い集めている
散らばった
こくはくを


自由詩 プールサイド Copyright 夕凪ここあ 2007-07-21 03:05:07
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