夜雨
ねなぎ

視覚が寸断されるように
蒸すような味覚を
領域に侵食されて
縦波に揺られていた

不安定な流れでは
確認すら覚えず
認識を失ってしまった

掻き鳴らされる
物打ち跳ねる渦の中で
飛沫が空気を捲いて
振動するのを聴いていた

媒質が変わったならば
距離など測らなくて
良いのだと知った

圧力の変化に戸惑い
絶え間無い共鳴を
求めるように
声が漏れていた

粒子の密度の変化を
読む事など無意味だと
解った気がした

見えもしない濡れ羽色の空から
落ち散らばった水が
切り裂く空気の微細を
構わずに吸えば
揺蕩う音が
嫋やかに匂った


未詩・独白 夜雨 Copyright ねなぎ 2007-07-20 22:32:49
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