萬屋(よろずや)
北大路京介

日曜日の昼さがり ブラブラ散歩
少し歩きすぎたか 見覚えのないところまで来てしまった

萬屋を見つけた
よろずや?

マンガでは見たことあるけれど 実在するとは

"品行方正 好奇心旺盛 気分はいつまでも大学生"

オイラは当然店に入る

*

店内は狭く
年齢不詳 若く見積もっても三十代前半
グラサンに無精ヒゲのマスターがひとり

“ALL¥300”

貼り紙があるだけのシンプルな店内

いったい何を売ってるんだ?

*

「あのー 何を売ってるんですか?」

『なんでもあるよ』

さすがは萬屋 なんでもあるんだ


「惚れ薬なんか ありますかね?」

『あるよ』

おぉ あるんだ
愉快なお店だ
しかし、誰に どうやって飲ますかがポイント
愛しのカオリちゃんは 今 どこにいるかもわからないしなぁ

「米倉涼子の恋心とかも 買えますかね?」

『買えるよ』

えっ 買えちゃうんだ  すげー

【着信音】ちゃーちゃっちゃっちゃっちゃっちゃらら〜ん♪

こんなときに電話?! 誰だよ?

「北大路京介でございます もしもし」

『突然の電話。 ごめんなさい。
 はじめまして。 米倉涼子と申します。
 私、まえから京介さんのファンで、この想い止められなくて…
 週刊誌やワイドショーで噂になった彼とは何もないんです。
 京介さんへの想いを紛らわせたかったんです。信じてください。
 私と。 私とお付き合いして頂けませんでしょうか?
 これ、私の番号なので、お暇なときにコールしてください・・・
 よろしくお願い致します。』

「こ こちらこそ よろしくお願いします。
 えっ 明日ですか?
 あいてます。  いいともー」

すげぇ

『お買い上げ ありがとうございます 300円になります』

「はい 300円」

安っ

世界平和... まてよ 世界征服も…

「世界の王様 というか 神様になれますか ね?」

『なれるよ』


【着信音】ちゃっちゃっちゃ〜ちゃららちゃらららら〜ん♪

オカンから電話か

「おかあさん? どしたん?」

『もしもし。おかーさんです。
 いや、あんた、すごいやないの!
 "すえは博士か大臣か〜"なんて言ってたけど、
 まさか神様になっちゃうなんてねぇ。
 おかーさん、鼻が高いよ。

 それから、テレビで米倉涼子が神様夫人候補とか言うてるけど、なに?
 あんたら付き合ってるの?
 おかーさん、認めませんよ。』

「さっき米倉さんと付き合うことになってん。
 おかあさん、誰やったら認めてくれるの?」

『う〜ん。
 そうやなぁ。
 篠原涼子かなぁ』

「えっ なんでなん? 
 米倉涼子とあの歌舞伎の人は関係ないんやって。
 それに篠原涼子、もう結婚してるし!
 あれ?
 おかーさん。おかーさん!」

切れてもうた
まぁいいや

『お買い上げ ありがとうございます 300円になります』

「はい 300円」

うわぁ 願い事叶い放題やな ラッキー ラッキー

あと千円札一枚しかない



「あのー この千円札 一万円札に買えてもらうことできますか?」

『できるよ』


未詩・独白 萬屋(よろずや) Copyright 北大路京介 2007-07-20 15:04:38
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