ふるる

夏の
夜が
激しさを増し
ぼくは
水が欲しかった
とても

海水浴
波に
持ち上げられて
足がもうつかない場所へ
つま先に虚無が触れ
頭上には
目を閉じても赤い
太陽

波の腕が
ふいに太くなり
無造作に
叩きつけられた
衝撃の後
手のひらがすこし
裂けて

傷口から
ぼくがすこし
失われるような
生まれるような
感覚

波で
洗われては
生まれる


血は
海水にゆらめいて
生き物のように
漂っていった


待ってくれ

もらった手紙の返事を
言うよ

すぐに
照れたり
もったいぶったり
ごめん

裂け目をぐっと
押さえ

うずく
傷口
疲れた
身体

夏の
夜が
激しさを増し
ぼくは
きみが欲しかった
とても

夏休みの間じゅう
波間に漂っていたぼく
地元での事件を
知らずに

もらった手紙の返事を言うはずだった
クラスメートの名前が、


消えていた

残されたのは
日焼けた肌と

手のひらの
白い
傷跡

うずく
いつまでも

まぶたから
なにかが
失われるような
生まれるような
感覚

涙で
洗われては
生まれる

きみ

眠れば
つま先に虚無が触れ
頭上には、、


夜が
秋に侵食され
ぼくは
きみの
影でもいい
欲しかった


いまも



自由詩Copyright ふるる 2007-07-17 23:58:19
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