パン工場を爆破
花山草太郎

まったく彼女はブッソウな事を考える
行き場を失ったサラリーマンなどがパン屋の前で鼻をひくつかせ列を成す
そんなシーンはもう見たくないと言うのだ
朝、ただでさえ陰鬱な出社のタイミングに
そんなシーンはもう爆破してやりたいと言うのだ
つらい毎日に耐えるお父さん達が救われるのなら良いじゃないか
パン屋さんは何も悪くないじゃないか
働きもしない僕がそう言うと
彼女は黙って2、3人の可愛そうなお父さんたちを爆破してそれで収まる

でも駄目だ!悪いのはサラリーマンを呼ぶパン屋が売るパンを作るパン工場だ!
山崎ベーカリーのクリームパンにジャックナイフを突き刺すと
彼女は家を出て、その後すぐにバイクのエンジンがかかる音が聞こえた
本気だ
彼女は本気でパン工場を爆破する気だ
僕はぶるぶると震えながら楽しい事を考えるようにした
間も無くテレビのニュースで大規模な火災が伝えられる
場所はもちろんパン工場で、出火原因は不明とされた
すすけた工場の壁を見るにどうやら爆破とまではいかなかったようで
僕は安心したが、少しがっかりして
クリームパンに刺さるナイフをぐりぐりと動かした


未詩・独白 パン工場を爆破 Copyright 花山草太郎 2007-07-17 04:54:49
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