雷傘
ねなぎ

乱立する雨の中で
傘もない

点かないと言う連絡が入ったのは
轟が聞こえ始めた時だった

傘が歩いていく

横を迷惑そうな顔で

申し訳なさそうに

僕は立っている

車が過ぎていく

特に何も無く

ヘルメットの庇から垂れた

水に歪んでいく

交差する声の向こうは
何の感情も無い

脚立を支えている手が滑り
作業服で擦るが取れやしない

僕は顔を上げている
雨の先を見ている

水が落ちてくるのは
薄暗い灰色があるからなのか

現象を聴くのは
影響が見えるから

じっと手に力を込めているのは
痺れているからと折れそうだから

声が大きくなるのは
薄まってしまう音の為

見上げた雫が

目に入る前に

輝いて

散って

照らされて

降り注ぐように

鳴っているのかも

解らずに

目に飛び込む

粒が明滅して

唐突に光ったのは
電子が満ちたから

腰道具を締め直して
袖で滑る顔を拭う

乱立する傘なのに
雨も無いよりマシかと思う


未詩・独白 雷傘 Copyright ねなぎ 2007-07-14 01:39:31
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