山中 烏流

水溜まりに映る
青く、吹き抜けた空の
隅っこで泣いている
雲を見つけた
 
そこだけが
深い灰色に沈んで
しくしくと
雫を落としている
 
 
大丈夫ですか、と
声をかけると
 
雲は小さな声で
嫌われものは
隅っこで泣くしか、と
言葉を返した
 
 
白い太陽が
水溜まりを少しずつ
溶かしていく
 
それすらもまた
あの雲の
雫になると、いうのに
溶かしていく
 
 
雲の下へ
傘を持たずに飛び込んだ
たくさんの雫が
降り注いで、痛い
 
私はその中で
大丈夫
嫌ってなんかないよ、と
その一粒一粒に
言い聞かせていく
 
 
 (そっと、唇を
 (寄せて
 
 (囁くように
 
 (許すかの、ように
 
 
すると雲は
少しずつ泣き止み
仄かに湿りを帯びた息を
柔らかく、吐いた
 
その刹那
空が七色に染まり
私は
溜め息を吐く
 
 
だって、こんなにも
 
綺麗。


自由詩Copyright 山中 烏流 2007-07-11 15:34:09
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