壁に沿って上昇する蝙蝠
カンチェルスキス




 


 駅ビルの屋上から飛び降りてから
 地面に落下するまで
 ずっと一人だった
 公衆便所の個室から伸びて外まで出てる
 トイレットペーパーが
 雨に濡れて溶けそうだ
 誰かが入って自動ドアが開いたパチスロの店内の
 床に
 深紅のハンカチが落ちてる
 横断歩道を歩くのを邪魔した傘の羅列が
 敏感な鼻先を削り
 水溜りに全部映っている
 足が生えてくるはずだと思った
 勘違いかもしれない
 この体には傷が一つもない
 駅ビルの屋上から飛び降りてから
 地面に落下するまで
 ずっと一人だった
 壁に沿って上昇する蝙蝠








自由詩 壁に沿って上昇する蝙蝠 Copyright カンチェルスキス 2004-05-17 17:45:04
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