回転式自動ドア
チアーヌ

回転式自動ドアは
通れない
怖いから
足がすくむ

こどもが死んだ
やっぱり って
思った

エスカレーターも
苦手だ
乗るときに
心がいつも
ざわざわする

エスカレーターの
階段が吸い込まれる         
あの穴に
引きずり込まれると
乗っている間中
思う

運動神経が
たぶん
人より
鈍いので
毎日毎日
気をつけて歩いている

それなのに
いや、そのせいか
踏み外すときは
思いっきり
踏み外し

どこまでも
落ちていってしまう
どこかに捕まって
助かることも
できずに

踏み外さないように
踏み外さないように
必死に
歩いているのに

でも
まっさかさまに
落ちていくとき
というのは
案外
気持ちいい

どん、
と下に着くまでは


落ちた先で目を覚ますと
そうっと起き上がり
また気をつけながら
歩き始める

這い上がることは
もう
できないから
平坦な道を行く

一番最初
自分がどこから
落ちてきたのか
なんて
もう
思い出せない

踏み外さないように
踏み外さないように

毎日
必死に
歩いている

でも時折
回転式自動ドアに
出会う
何度も何度も
出会う

わたしには
無事に
向こう側へ行くことなど
できないのに

怖くて
足がすくむ
通れない
通っちゃいけない

回転式自動ドアは
わたしの目の前で
ぐるぐる
回っている


自由詩 回転式自動ドア Copyright チアーヌ 2004-05-16 21:28:01
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