祝え!ドンケツ記念日
人間

 
過去を連れ子にして裏通りのレンタル暗室に潜り込み
かなしいを現像すればドン・ケツァルコアトルになって叫ぶ
 
旧友と連絡を取れなくなっていくのが
誰かが離れていくのが 誰かと親しくなるのが
人に忘れられるのが 人を忘れていくのが
物凄くかなしいがドン・ケツァルコアトルになって叫ぶと
声の端から情という情は石の心臓になり
音の粒が揃い 皆は変な血へ遅れ
体から中心線が消えればそれがドンケツ記念日
 
日々が平凡の冗長であることも
時間が記憶の堆積の上で比例的に加速度が増える疫病であることも
よりどりみどりの差別偏見を通して人と人が推し量り合うことも
劣等感は”(蓄積された)過去の想起の否定”にカテゴライズされることも
欲望の中に向上心が居候していることも
趣味嗜好すら社会の規範に則らねばならないことも
突き詰めれば話す事なんて何一つ無いことも
誕生日の後から金魚の糞状に懐かしさが増えていくことも
立て篭り茶番劇も殉職した若者も裏社会による事件の揉み消しも
相対も比較も個人の感覚の外からは共有できないということも
言葉が権力である現代は西欧偏重論理的知性の横暴だ糞馬鹿野郎と批判した所で何も変わらないことも
繋ぐ手が無いことも
生卵の賞味期限が分からなくなってしまったことも
本当は何も知らないことも
かなしいが溢れて長蛇の列を作る
 
ドン・ケツァルコアトルが非道い劣等感をこじらせて羽根のように降る自己嫌悪が奇妙な果実を真似て鈴生り
ビリー・ホリデイとグレタ・ガルボを対角線で結んだ重心に岸田今日子を置いてアル・バッターニで栓をし
その下を黄熱病のスナフキンがリュウグウノツカイのツガイを両手に引き摺って歩き
出来た二本の轍を走るタービン式蒸気機関車に揺られてシベリア僻地に運ばれるアキムアキームイチとの約束を
必ず守るドン・ケツァルコアトルは社会の落ちこぼれで
経済的にも精神的にも自立出来ないままドンケツたる所以の
「感情的沸点の低い馬鹿」であり「ディスコミュニケーションのゴミカス」だが
石の心臓なので動じない
 
現像の途中で
生命デザイナー大自然が茶々を入れる
「それはポイントやアクセス数がクライアントの評価としてヴィヴィッドな形で表面化するものさ」糞黙れ
・de-()
+sign()
=de-sign()
貴様ぶっ殺す
と天突く怒髪のスケツクトントンのドン・ケツァルコアトルが吐く罵倒の内臓が冷えていく
所詮は感情的沸点の低い馬鹿である
すぐ寝る
不眠症の夜光便所虫で生まれつきのビリなホリデイを過ごす
体にも必要とされない野菜ような生活の飛躍
軽い誤訳が一方通行標識
 
大量のかなしいが貨物列車に積み込まれて半蔵門で屠殺される
それをスピード写真で撮るロバート・キャパにドン・ケツァルコアトルは受け売りでこう言う
「昔から、(ここで大野一雄が踊るのを止めて一番風呂に入る)
市場と名声を遠く(ここでソフィア・ローレンが首をかしげる)離れて、
新しい価(ここでベネディクトゥス・スピノザが割れたレンズの枚数を数え間違える)値の創造者たちは住んでいた。
わが友よ。逃れ(ここでアンリ・ミショーのメスカリンが切れる)なさい。
あなたの孤(ここでフランソワ・ヴィヨンが魚の骨を喉に引っ掛ける)独のなかへ。
かなたの、荒く雄雄しい風の吹くところへ。(ここで」
陸軍落下傘部隊が夕立になって突き刺さる過去の僕たち私たちのバッドエンドがすごくかなしい
 
有望な前後対称型超広角レンズを覗くと中心線になるリュウグウノツカイの骨を折って雌の花櫚を貪り
中心に敬遠されて落ちこぼれがかなしい一方通行標識をディスコミュニケーションな石の心臓が叩き
「分からない」から「好きになる」までを世界地図に待ち針で留めて流動する血のタンジェントで結び
ドン・ケツァルコアトルだけが叫ぶ
祝えドンケツ記念日
 


自由詩 祝え!ドンケツ記念日 Copyright 人間 2007-06-27 19:47:14
notebook Home 戻る  過去 未来