触れること
水町綜助

舌がある
それで君を舐めようか
冷えた舌先が触れるとき
君の肌で
どんな音がするか
固まった
ちいさな
ちいいさな結晶が
溶ける音がするか
こんなすこし暑い季節なら
しゅと
音が
夕方にたちのぼって
隣室の窓から
遠い太陽の終わりが
擦りガラス越しに
君のつまさきまで伸びて
届かずに
そこでほんとうに終わる

むかしある冬に
風鈴を見ていた
五センチも離れない距離で
ガラガラと鳴っていた
風鈴にも舌という部品があって
そいつから垂れ下がった短冊が
目に見えない風に跳ね退けられたりしながら
陶器の豚を内側から叩き続けていた
一度ぶつかるたびに
うるさくて
何度も何度も
瞬間なのか
鳴るのが早いのか
もうわからなくなって
そのせいじゃなく
ふれたからなのか
目に見えないまま
動かされたからか
本当はわかっている

もうあんなことはやめよう
伝わるのか伝わらないのかわからない言葉で
なにかをはらんだ気になって
はぐらかすことは

ただ言えばいい
こどもの言葉で
さわりたいと




自由詩 触れること Copyright 水町綜助 2007-06-22 00:10:45
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