*雨音 2007*
かおる


東京には空がない。
そんな事は
遠い昔のおはなしになってしまった

新都心でも今はやりの高層ビルディングも
空に浮かんでいるよう
眼下には千切って零した緑の森と
トミカの車が血脈のように動き回っている

この恋の賞味期限は後どの位残っているんだろう

色とりどりの遠い異国の料理が
処狭しと並ぶ小ぶりのテーブル
無骨な指が
エビをくるんと裸にしていく

さっきまで夏を先取りしたように
蒼い空を際立たせる真っ白な雲がもくもくと
ピクチャーウィンドゥを縁取っていたのに
どんな魂胆を隠し持っているのか
墨汁を零したような有様で
ひとつふたつと数えたくなる大粒の雨が降る

まるで初めて鍵盤に触れた子どものよう
たどたどしいリズムで
金魚鉢のような窓ガラスを打つ


自由詩 *雨音 2007* Copyright かおる 2007-06-21 18:20:10
notebook Home 戻る  過去 未来