黒い瞬き
doon


 私達は実に多くの物に触れていた
 いや、どこか語りに欠けるものがある
 触れていて
 生という得体の知れない獣に
 愛情の紅さを見ていたのだろう
 血色の涙が呼吸となる
 焔の雨

 夜はこうもシンと鳴り響いているではないか
 私は一辺の部屋角に
 走り抜ける黒い者を見た
 戦き、手は探りを入れる

 血が沸騰する
 奴を殺せと
 血は鉛色に腐っていた

 幻覚は小さな猜疑心を目覚めさせ
 自分が探していたものを打ち払い
 生まれる
 奇怪な殺人冥利
 ないているのは
 蟲だろうか
 私だろうか

 羽はブーーンと鳴り
 夜はシンと返す


 焼酎の中に
 丸い夜の月が
 やっと帰ってきた


自由詩 黒い瞬き Copyright doon 2007-06-21 03:06:33
notebook Home 戻る