漆黒の果樹園
鈴木カルラ

果樹園では、幹、枝と葉が、そこで激しく実を結んだ果物さえも漆黒の色をしている。
そのように漆黒の色がそれらを魅了させる。
夜陰の闇がそうさせるのか、いや違う、空は蒼く、一片の雲でさえ赦さない。
いかなる暗がりであれ、闇であれ、光を理解不能として消滅を誓うのだから。
なのに、どのような漆黒の色が、虜となった果樹園の木々が光を理解するのか、理解されたとすれば光は漆黒の影としてその勤めを果たすに違いない。
地面に落ちる漆黒の影が、漆黒の幹、漆黒の枝、漆黒の葉と漆黒の果物とが、混ざり合う。
そして、それが地面に覆ったとしても、太陽の光を注がなければならない。
果樹園の木々は光の理解者あり、簒奪者として、漆黒の色にはすべての者が下僕という光栄に、まさに、それに能くするためにある。
もう、この果樹園によって最後の色の破片すら私から奪う、暗がり、ほとんど男性として形をなし遂げていない私のすべての有色人種の破片が削り取られる。
誰かが与えた微かな光が陰気に存在することはできない。
地面と私が、しかし、それは十分に、そして、地面の方向へ残された漆黒の果樹園、漆黒の果物を私はもぎ取る。
無限の蒼空、無限の暗がりが、その口へ、そして、さらに詰め込まれた意識さえも離れて実を結ぶのだ。
それは、私の口の内部に甘美の味覚を送り、そして、脳が力ずくで果物の味によって統治されてゆく。
蒼い空が生命を供給する、私が漆黒であることのために。
果樹園の木々が私の身体を透して見える、それによって果樹園の木々が私の体を対等に扱い、そして、一体感の創造が昂揚する。
それが、勤めて、支配力として、そして、一本一本の神経によって充填される。
漆黒の幹、漆黒の枝、漆黒の葉が、--実を結ばせる漆黒と私―そして、蒼く限りない空、それは、恋人同士のように寄り添う。
そうだ、何もかも在る、そして、私の神経回路と漆黒の果樹園の共有が既に始まっている。
漆黒の果樹園は私の一部、私の全て、蒼い空は恋人、それは愛人のようだ。
私の心臓は、漆黒の果物と同じ甘美の血で充たされている。
脳は、降り注ぐ光、それしか、そのことしか考えられない。
目は、無限である蒼い空を見ることができる、だが、それしかできない、蒼い空が無限である世界として広がり、
私は、ただ、みつめる、漆黒の果樹園の一部として……



自由詩 漆黒の果樹園 Copyright 鈴木カルラ 2007-06-19 20:55:18
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