渡辺によって
水町綜助

隣のWによって名付けられた半月が
水溜まりの中の夜を
割れながらくりぬいていた

   *

  夏の水門に置き去りにされた犬が
  鼻をなめて
  水の流れを嗅ぐうちに
  錯覚を始めるはやさで

鼻を鳴らした

  犬「改札口のまえで
    僕を待っている
    かっぱの像が
    うみを背にして」

   *

ローライダーのチャリンコが
チカーノに蹴ったくられながら
しゃあ ぶき
と 走り抜け
水鏡を割るさまに
重油のうみをおもえば
Wは唾を吐く
白い泡が口角に残って

W「バイト してみようと おもって
  小林ねんじみたいな おっさんが 本山におって
  そいつが ひとの顔にうんこを したがっとって
  して たべてくれる わかものを さがしとる
  らしいんだわ             十万円」

街路の
黒い水溜まりは
街灯に銀色に光って
吐かれた唾液の白い泡が
波紋をつくる
わあわあ
跳ねて遊ぶ

水の中の半月は満ちゆき
出世魚みたいに
新しい名前が生まれて
 その名を聞いて
  犬はあくびをした

  日は傾き
  生えかわりの毛が一本
  光って舞うなか
  水門が開き
  海へと水が流れ始める

















 やめとけば


自由詩 渡辺によって Copyright 水町綜助 2007-06-19 09:38:30
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