定期券
水町綜助

駅までの道を雨の中歩いていて
改札に入ろうと財布から定期券を出して手に持って
けれど指からすり抜けて濡れた道路に落としてしまって
だから拾おうと僕はしゃがんで
水の流れるアスファルトを爪で引っ掻いて掴もうとして
でもうまく拾えなくて
こんな大きな街の真ん中で
みんな歩いている中一人しゃがみ込んで
こんなもの一つ拾うことがうまくいかなくて
こんな雨が降りしきっているのに
しゃがんだ僕の靴も通り過ぎていく靴もみんなびしょ濡れなのに

指先がもがくみたいに地面を引っ掻く度に
どうしようもない悲しみが幾つも
降りしきる雨みたいに
黒い路面をどんどんと濡らしていった


自由詩 定期券 Copyright 水町綜助 2007-06-15 08:51:29
notebook Home 戻る